ダイジェスト[2022]
DIGEST
ほとんどの選手がレインウェアを着用する雨模様の中、アルペングループ創業50周年記念大会 第27回ゴルフ5レディスが、5年ぶり2度目の開催となる千葉県市原市のGOLF5カントリーオークビレッヂにて開幕した。気温も22.6℃と低く肌寒さもあり、ウェットなコンディションにもかかわらず、選手たちは難コースを攻略し、予想以上のスコアで伸ばしあった。開幕前の注目としては、ディフェンディングチャンピオン吉田優利の連覇か?それとも稲見萌寧の2週連続Vなるか?はたまた、2年ぶりの出場となる西郷真央と山下美夢有の同級生メルセデスポイントTOP争いとなるか?あるいは先週のニトリレディスで3日間首位を守りながら最終日につまずいた原英莉花の雪辱の今季初Vなるか?といったところだろうか…。
そんな中、序盤に藤本麻子が4アンダーで首位を走れば、ユン チェヨンらも追随し、一時は小倉彩愛が5アンダーで単独トップに立つという展開。しかし、この日の主役は違った。15組でスタートの勝みなみが前半を4アンダーとし、INに入っても13番ロングでイーグルパットがカップ縁に止まるも、そこから4連続バーディーを奪い、手がつけられなくなる。最終18番でもバーディーを決め、5年前最終日にO.サタヤが叩き出した「64」を上回る「63」、見事大会コースレコードを達成。ゴルフ場より賞金10万円が贈呈された。勝は先週予選落ちして土日はゴルフを忘れてリフレッシュしたという。自身初の試みが功を奏したのか?明日以降もどこまで伸ばすか期待は高まる。ちなみに当コースの大会レコードは12アンダーだ。
そして、初優勝を狙うセキ ユウティンが6バーディーノーボギーのプレーで3打差の単独2位につける。3位タイには4連続バーディーを奪いノーボギーの福田真未、6バーディーを奪った原英莉花と申ジエ、7バーディーの若林舞衣子の4人。5打差の7位タイには藤本麻子、ユン チェヨン、小倉彩愛、堀琴音と、ママさん初Vを狙う横峯さくらがつけている。注目の稲見萌寧は、歴代優勝者の小祝さくらと昨年最終日に首位から伸ばせなかった大里桃子らと共に6打差の12位タイ。吉田優利は1番Wボギー、2番ボギーというスタートながら5番からの3連続バーディーでアンダーにするも、その後一進一退の繰り返しで伸ばせず1アンダー32位タイグループと出遅れた。このグループには西郷真央、山下美夢有、西村優菜も名を連ねている。
さぁ2日目は、誰が伸ばし、どんな素晴らしいプレーを見せてくれるのだろうか?天気は?風の影響は?すべてが未知のゾーンだ。いずれにせよ、3年ぶりに有観客開催となり、創業記念大会として白熱を極めるムービングサタデーになることを期待したい。
昨年も予選2ラウンドでビッグスコア「64」を叩き出して一気に85ランク上げた勝みなみの爆発力とキレキレのショット、そしてピカイチのパッティング。今年はここまでパーブレーク率No.1。無双の完全優勝なるか?
クラブの安定、手応えを感じるショット、かつての勢いを取り戻しつつある原英莉花。悔しかった試合のバウンスバックでツアー5勝目を狙う。
最終18番で惜しくもボギーを叩いてしまい、一歩後退するも、常に基本的な動作を確認しながらプレーした稲見萌寧。2週連続Vはまだまだ十分に狙える位置だ。
夫婦でのプレー、そして上田桃子・全美貞と同組というベテラン勢でのプレーだった横峯さくら。子どもの体調不良で結果的には3週の休み明け。そろそろ史上7人目のママさんVが見たい。
大会2日目、予選第2ラウンド霧がかかる山並み、極わずかに感じる小雨という天候のもと第1組が予定通りスタートし、途中から全組ホールアウトまで日差しで影を落とすくらいの良い天気となった。注目ポイントは、なんと言っても初日に大会コースレコードを叩き出した勝みなみがどこまでスコアを伸ばし、独走するのか?そして、誰が勝に食らいつき差を縮めるのかだったが、そんな期待と予想を覆すような混戦となり、勝負の行方はわからなくなった。これこそムービングサタデーと言われる所以だろう。
最終組の勝がスタートする前に三ヶ島かなを筆頭に、小倉彩愛、成澤祐美らがグイグイとスコアを伸ばして行く伸ばし合いの一日になりそうな気配。そんな中、最終組の勝みなみ・福田真未・セキユウティンは逆に、スコアが動いたのは福田の3番での1バーディーとセキユウティンの9番のボギーのみ。勝もチャンスにつけても決まらない。しかし、勝は開き直って自分のゴルフを続け、ひたすらパーを重ねる。そんな勝に対して、まず追いついてみせたのはルーキーの小倉彩愛だった。小倉は10番で今日5つめのバーディー奪い9アンダーに、そしてすぐに最終組の14組前を行く吉田優利が17番で追いつき3人が並ぶ。原英莉花も1打差に詰め寄ったが並ぶことはできなかった。
後半に入って、ついに勝が13番ロングでイーグルトライを外すも今日初のバーディー。再び単独首位に抜け出した。その後は押し上げる選手はいても、追いつく選手は現れず、首位に並びかけた小倉が18番でトリプルボギーを叩いて失速。反対に、成澤祐美、高橋彩華、小祝さくらがスコアを伸ばし、トップと2打差まで迫る。今日のベストスコアは吉田優利の「64」、続く好スコア「66」で6つ伸ばしたのが成澤祐美、三ヶ島かな、INスタートだった永井花奈、GOLF5所属で上がり5連続バーディーでのイ ナリ、初日88位タイからの小野祐夢の6人。5つ伸ばして1打足りなかった鶴岡果恋とは非常に大きな1打である。上田桃子、渡邉彩香、GOLF5所属・穴井詩もイーブンパーで1打及ばず会場を後にした。
よって、最終日最終組は、勝みなみ・吉田優利・成澤祐美。成澤は6度目の受験で昨年プロテストに合格したルーキーだが、実は渋野日向子の岡山作陽校の1学年先輩、ツアー8戦目、最高位は19位タイ、最終日最終組は初めてとなる。楽しみな組み合わせだ。そして1組前が勝と同世代、そう黄金世代の3人、原英莉花・小祝さくら・高橋彩華だからますますおもしろい。その前に西郷真央、怖い存在・申ジエ、ルーキー阿部未悠。2週連続Vを狙う稲見萌寧は4打差4組前から逆転Vを狙う。さぁ見どころ満載の最終日、白熱のデッドヒートの着火時間は明朝8時だ。

惜しいバーディーパットがただ入らなかっただけ、けっして悪くはないと前向きにトライし続けた勝みなみ。2日間ノーボギーは勝ただ一人。中身は似ているという吉田優利とは仲良しであり、学ぶべき点があるという。そんな二人の最終組での争いも楽しみだ。

昨日OBでWボギー、続く2番もボギーという最悪のスタートとは雲泥の差となる3連続バーディースタートとした吉田優利。明日は「状況に応じた判断と、攻めと守りを見極め」て頑張りたいという吉田は、いつもより多い応援を背に地元優勝を狙う。

一昨年の覇者・小祝さくらが6バーディー1ボギーで12位タイから浮上!今週少し変えたスイングが感じが良いという小祝は、コースマネジメントを綿密に行いながら、明日はチャンスにつけるショットに充填をおいて、伸ばし合いについて行けるようベストを尽くしたいと宣言。大会史上2勝を挙げているのは福嶋晃子・不動裕理・飯島茜の三人のみ。そこの名を連ねるのかもしれない。

前半で3つ伸ばすもINに入るとボギー先行で一退一進…そこから何度もため息をついた原英莉花は追いつくことができず、2打差の3位タイグループ。パットがショートしまくったことが原因だと振り返る。「オールドルーキー」を見て刺激を受けているという原。明日は気負いすぎることなく「誰よりもバーディーを獲る」覚悟で、攻めのゴルフを魅せてくれるだろう。
大会最終日、曇りからの晴れの天気予報で最高の一日になる予定だったが、朝の濃霧が晴れず、予定よりも1時間20分遅れてのスタート。何か波乱が起こる前兆を感じさせた。注目はやはり最終組。単独トップの勝みなみが逃げ切るのか?吉田優利の逆転連覇か?遅れてきたルーキー成澤祐美の初Vか?あるいは1組前の黄金世代トリオが押し上げてくるのか?僅差ゆえのデッドヒートが期待された。
まずは勝が幸先よく1・2番でバーディーを奪い3打差をつける。しかし、下からの追い上げが激しい。成澤が、そして、岸部桃子、小祝さくら、高橋彩華、吉田優利、堀琴音がグイグイとスコアを上げ2位タイグループに加わっていく。すると勝が4番でショートパットを外し今大会初ボギー。続く5番でも同じくらいの距離を外し連続ボギーとしてしまう。ここで首位は10アンダーで勝・堀・吉田・セキ ユウティンの4人に。そこから10分もたたないうちに、さらに尾関彩美悠・菅沼菜々・稲見萌寧も加わり7人という大混戦に。一時、阿部未悠も加わるが、1つ取り返した勝と、13番でこの日8つ目のバーディーを奪った堀琴音が抜け出す。堀は最終組の9組前からの今日7アンダーの快進撃だ。
さらに15分後には小祝も加わり首位は3人に。次に吉田が、続いて菅沼が、セキ ユウティンが次々と5分刻みで並びかけていく。すると勝が9番でボギーを叩き、ついに首位陥落、トップは堀、菅沼、小祝、セキ ユウティン。そんな激しい攻防の中、セキ ユウティンが13番で4Uで打ったボールは見事に3m、それを沈めてイーグル、13アンダー、2歩抜け出した。だが、セキ ユウティンは14番を13mから3パットのボギー、15番でOB、Wボギーとして首位陥落。小祝が初めて単独首位に立つ。ところが14番で池ポチャし、まさかのトリプルボギー。吉田がここで単独首位に立った。すると優勝争いから脱落と思われたセキ ユウティンが不死鳥のように再浮上する。16番でロングで3打目を3mにつけバーディー、17番ショートでも5mにつけ連続バーディーで吉田に並ぶと、今度は吉田が14番の罠にハマり、再びセキ ユウティンが単独トップに立ち、そのまま12アンダーでホールアウトする。
堀と菅沼は11アンダーですでにホールアウトしているから追いつけない。チャンスがあるのは高橋、勝、小祝、そして1打ビハインドの吉田。残りホールがなくなっていくプレッシャーの中、吉田が17番で魅せた。何と誰もがあきらめていた17番グリーン左奥13mフックラインをねじ込んだのだ。これでセキ ユウティンに並んだ吉田だったが、18番でバーディーを奪えず、プレーオフに突入。吉田は同大会で2年連続となる。
日没が危惧される中の1ホール目、セキ ユウティンはティーショットを大きく右に。吉田が有利と思われたが共にボギー。カップが切り直された2ホール目、2打目を先に打ったセキ ユウティンが右横につけるバーディーチャンス。続く吉田はカップ左サイド、セキユウティンより2倍の距離。吉田はそれを決められず、見事に沈めたセキ ユウティンがツアー初優勝を飾った。夕暮れ迫る18番グリーンで、歓喜の涙のセキ ユウティンを大喝采が包んだ。なお、楽天ポイント100万ポイントがかかった最多バーディー賞は、2年連続で吉田優利が獲得した。こうして3年ぶり有観客で開催された大会は幕を閉じた。

福井で生まれ、5歳まで過ごしたセキ ユウティンは、中国でプロ転向後3年目に賞金女王に。郷愁を抱いていた日本ツアーに参戦したのが19歳。シードを手にしたことがない中での6年目の初優勝となった。

昨年は18番でスコアを落としての岡山絵里とのプレーオフを制した吉田優利だったが、今年は追いついてのプレーオフに敗れてしまい、ツアー3勝目、今季初V、大会連覇、地元Vを逃す結果となった。しかし、好調であることには違いない。次の勝利は目の前だ。

初日の大会コースレコード樹立、最終日単独首位発進の勝みなみこそ一番悔しいことだろう。最終18番でのバーディーは、まさに執念。なんとかパープレーにまとめた勝は喜びを顕にし、仲が良い後輩の吉田とのラウンドを称え合った。

中盤で単独首位に立った時は、誰もが「ついに来た」と思ったに違いない。本人はボードがなく首位に立ったことに気づいてなかったという。トリプルボギー後に“だった”ことを知り驚いたという小祝さくら。5回すべて予選通過、2位、優勝、5位Tと好成績は隔年?来年はそれを崩して雪辱に期待したい。